『南京豆』祖父を騙し続けた父親

私が中学生の時、三鷹市に住む祖父・渡邊鉄次郎の家へ父親と行った時のことだ。
いつものように晩酌でキリンビールを飲み、真っ赤っ赤な顔をした祖父の鉄次郎は、酒のつまみにしていた南京豆を手にしながら、私を諭すようにこう語り始めたのだった。
「有一。この南京豆をよく見てごらんなさい。ふたつに割ると、男と女の形になっているだろう?人間もこのように、ふたつが重なり合ってぴったりひとつになるようにできているんだよ。」
なるほど、一聞すると比喩を用いたそれらしい教訓に聞こえるかもしれない。しかし、普通に女性に対して恋心を抱く思春期の少年だった私は、頷きながらも内心「そんなの当たり前だよ」と思っていたのを覚えている。
この時の出来事から推理できるのは、ジャニーズ系のゲイ能人にする夢を諦めていなかった父親が、私のことを「どうやら同性愛者のようだ」などと言って祖父を騙したのではないかということだ。そして、祖父自身は、元々、私をゲイ能人にすることには反対していたに違いない。
その10数年後、祖父の会社を継いでいた父親は、銀座のホステスに相当な金額を貢いだ挙句、祖父母が住む屋敷や所有するアパート、テナントなどの不動産を全て借金の担保に入れ、破産したのであった。
この私の父親だが、もはや「嘘しか言わない人間」と言っても過言ではない。そして破産をしたのは息子であるこの私のせいなんだ。私を親不孝者のひどい人間だ等というデマを流し、多くの人達を騙してきたのではないだろうか。









































































































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